「物語に基づく医療」
(Narrative Based Medicine NBM)のすすめ
EBM(Evidence Based Medicine)による医療はえてして人間を全て同一のものとして扱う、まさにそのことによって、素晴らしい効果を発揮する場合もあるが、人間それぞれ性格、価値観が(生き方)が全く違う。
このように人間それぞれが全く異なっている者として取り扱うことによって、その効果を発揮することに気付かなければならない。
患者自身の体験を理解し、患者との良好なコミニュケーションを保つことが重要である。例えば、現代は患者さんの病歴を取る場合でも現代医学のEBM(Evidence Based Medicine)では標準化された形式にのっとった病歴が良いとされ、病気の診断に必要な症候をいかに引き出してくるかが重要となり、個々の症例の特別な事情やその経緯などは、病気の診断には無用とばかりに無視される。また、EBMは統計学という手段を用いてエビデンスを作り上げる。例えば癌の患者さんの場合、この癌の状態であれば平均寿命はあと何カ月ですと言うような、言葉が発せられる。この平均値というものが曲者で、決して事実ではない。むしろ患者の心を不安にし、希望の芽をつんで悲観的な気持ちを抱かせ、治るものまで治らなくなってしまう。また、マニュアル化されたガイドラインによる処方は(皆保険制度でしかたがないのだが)、時として薬の多剤処方による副作用を招くことになり、さらに患者の薬に対する不安を増長する。
NBMは個々の患者さんのそれぞれの物語(生き方)に耳を傾けることによって、その症状の個別性に注目し、患者のおかれた状況に共感し、心を通わせることができる。
現代はデータ優先の医療が行われ、患者さんは医療機関にかかっても納得できる医療を受けていないと感じることが多く見受けられる。
我々薬剤師はとかくEBMに頼りすぎることはしかたがないが(科学者だから)、それを踏まえた上でNBMで補完してほしいと思う。
漢方総合医療(漢方薬だけではなく、心を含めた食生活)は、まさしくNBMである。